LOVE × 大堀相馬焼 松永窯
LOVE × 大堀相馬焼 松永窯
「『新しい青』で、相馬の
海開きを祝うという事」
3. 伝統、そして若い力
- 父:本当はね、震災後はもう引退して夫婦二人でね、細々とゆっくりと焼き物をやろうかと思っていたんですよ。
- L:お母様も陶器を作られるんですか?
- 母:私は相馬焼の雛人形や鯉のぼりの壁掛けなど、また主人とは違うものを作るの。息子が窯を再建してから、また大忙しになってね。今はここに吉田くんが来てくれて本当によかった。
- L:吉田さんはどうして陶器の世界に?
- 吉田:実はもともと文房具のデザインがやりたくて、僕は兵庫県出身なんですけど、関西の学校に通って一年半伝統工芸も授業で学んだんです。道具を使って何かを作るのはあまり得意ではなかったんですが、自分の手の感覚だけで作る陶器なら自信が持てると思ってこの世界に入りました。そして当時インターンとして来ていた松永窯に今年の4月から来たんです。
- L:そうだったんですね。この上絵薬はどんなプロセスで誕生したんですか?
- 吉田:最初は釉薬を作ろうと思っていたんです。普通は顔料を25%くらい混ぜれば色が出るんですけど、今回はなかなか綺麗に出なくて。
- 母:(吉田さんの研究資料を見て)すごい、こんなに研究してたのね。
- 父:若い子のやることを見ると、我々も勉強になるね。
- 吉田:ただし、釉薬にすると高温に耐えられず色が飛んでしまうことに気づいたんです。
- L:「やっぱり釉薬は無理かもしれません」と聞いたときは私も諦めかけたんですが、やっぱり諦めきれなくて。
- 吉田:1230度くらいまで熱する本焼きに耐えられる釉薬は無理でも、それよりも低温で焼く上絵薬なら作ることができるんじゃないかって。
- L:本当にありがとうございます。その研究も大変でしたか?
- 吉田:まあ、大変というか…。そうですね(笑)。
- L:本当にすごいお願いを叶えてくださいましたね。上絵薬が完成して本当に嬉しいです。
- 吉田:トルコ石を使った既存の青の釉薬とインミンブルーを混ぜたものなら、さらに綺麗に色も出るかと思って、別で試したりもして。
- L:ええ、そこまでやっていただいて本当に嬉しかったです。私も本当に悩んだんですが、やはり最初はインミンブルー100%で作った上絵薬を使いたいなって。
- 吉田:僕もその方がいいと思います。
- L:そう言っていただけると心強いです。世界初の上絵薬を作ってくれた吉田さん、その青を使った世界初の相馬焼を作ってくれた松永窯、本当にありがとうございます。
- 父:綺麗に仕上がるといいね。
- 母:そうね、窯から出てくるのが楽しみね。